1400字制限

最近の記事のほとんどが1400字を超えているのでタイトル無視も甚だしいが1400字「以下」に制限するとは言っていない

科学に国境はないが科学者には任期がある

大学をやめた。これはいわゆる退職エントリである。天皇陛下も来月退位なさるわけだし、明治天皇崩御にあわせて「殉死」をとげた乃木大将のごとく我々も職を辞して「殉職」をするべきである。と思ったけど殉職も死ぬやつだからダメだな。なんて言うんだこの場合。

のっけから日本語力の不足を露呈してしまったが、僕は小説家である。2016年に『横浜駅SF』という小説をWeb投稿したらバズって書籍化して、そのあと『重力アルケミック』とか『未来職安』という単行本を出した。今年も長編新作が出る予定。あと漫画原作者として『オートマン』というのを連載して2巻がもうすぐ出る。小説雑誌に短編もいくつか出してる。Web出身作家としてはまあまあ上手くいっている部類だと思う。

で、「本業は研究職です」ということをあちこちで言っていたが、ご存知のとおり今どき大学の研究職は多くが任期付き(契約社員のようなもの)であり、今回その任期が切れたので退職した。新しいポストを探す実績も気力もなかった。すると残ってるのは小説家だけなので、専業作家になった。

専業作家というと「ペン1本で食っていくという野望を叶えた人」と思われがちだが、経緯を考えると僕はそんな立派なものではない。「できちゃった結婚」的なものなので「なっちゃった作家」とでも言うべきか。「なろう作家」の派生形だ。(僕が投稿したのはカクヨムだが)

そういうわけなので別に「これから一生作家業で食っていくぞウオオオ」といった覚悟はまるでない。貯金は結構あるし仕事もしばらくは続きそうだけど、いずれネタが切れそうな気がするし、僕より先に出版社の体力が切れる気もするし、現代人の倫理に反する小説を書いて業界を干されるかもしれないし、政変がおきて中国なみの言論統制国家になるかもしれないし、単純に小説という行為に飽きるかもしれない。不安はカボチャより種が多いので、原稿のかたわら他の食い扶持を考えるつもりである。

ただ研究職でずっと食って行きたかったわけでもない。もし小説家業がなかったとしても、10年後くらいには研究をやめていた気がする。「なんか疲れた」とか言って。僕は根本的にそういう人間である。

つまり仕事をしたくないのである。人間が食っていくために労働をしなければならないというのは明らかに憲法で定められた基本的人権の侵害であるし、2019年にもなってこの問題を技術的に解決できないというのは科学者の怠慢というほかない。しかし自分がまさにその怠慢な科学者そのものだったので非難できた立場はない。

考えるのがめんどくさくなったので、とりあえず2つある仕事を1つにしてみた。たまった積読を消化しながら、ゆっくり人生について考えようと思う。まあ積読は読むと増えるんだけど。

それでは皆さん、良いエイプリルフールを。